2002.02.01
頻発する化学物質事故。対策は万全ですか?
私たちの身の回りには、膨大な数の化学物質が存在します。中には、水に触れただけで発火するものや、酸又はアルカリと反応して毒性のガスを発生したりするものも。本来厳重に保管されるか、適正に処理されなければならないこうした化学物質が事故の原因になってしまったら...。
ミヤマでは、処理の難しい化学物質の処分委託をお受けすることはもとより、これらの化学物質による事故現場の処置から運搬、そして適正処理に至るまで、一貫して対応しています。今回は、実際の緊急出動例等をご紹介します。
保管農薬の缶から漏洩!
あたり一帯に刺激臭が立ち込めた!
11:50...客先より営業所へ第一報
消防署へ通報の後、客先より当社の営業所へ連絡あり。電話による聴き取りでは、『農薬が缶からこぼれた。強い臭気と目への刺激がある』とのこと。ただちに、現場近くを別件で営業中だった社員に、現場へ急行して状況の確認と正確な情報の収集をするよう指示。同時に、営業所より当社の環境整備事業部処理担当者へ出動要請。
12:00...性状調査開始、さらなる情報収集と作業準備
環境整備事業部にて、該当すると思われる農薬に関する性状、人体への影響、安全な除害方法等の調査を開始。
客先担当者と連絡を取り、危険なため現場に近寄らないようにお願い。
また、漏洩数量、漏洩場所の状態の確認
(地面の状態は土か舗装か)を行い、現場対応するにあたって装備及び対応方法を検討する。
客先より次のような情報を入手。
1)漏洩量は不明であるが、荷姿はペール缶であり、最大20Lの容量があること。
2)地面はアスファルト舗装で屋根有り。
3)当該ペール缶の表面に製造企業名及び『・・ロー』の文字がかろうじて認められていた。
『ロー』は、『クロール××××』もしくは『××クロール』という名称の一部と考えられ、漏洩した薬品はクロロピクリンを主成分とした農薬と推定される。
これらの事前情報及び調査から以下のことが判り、対応方針を決定した。
a)刺激性の強いガスが立ちこめていると思われる為、現場の空気を吸引しないで安全に作業できるように、エアラインマスクを準備する。これは、この時点で漏洩物と推測されていたクロロピクリンが、吸い込むと気管支を刺激してせきや鼻水が出る、催涙性がある、直接触れると水膨れを生じることがあるなどとされているからである。
b)破損容器に残っている液の更なる漏洩を防ぐ為、大型の受け皿と移し替えの道具、及び、既にこぼれてしまった液の回収の為の道具や、ガスや液の吸着が可能と思われる専用の吸着剤等を準備する。
c)適正な処理の為、更に状況証拠を集めるように努める。製造企業名が判っているので、同社の製品に何があるかの確
認と、現場でサンプルの試験を行ない性状を把握した上で扱い方、運搬方法及び適正な処分方法を検討する。
d)処理薬剤を社内で調達して持参する。
以上の方針に基づき、環境整備事業部処理担当者2名が作業用装備品の準備にかかる。
12:50...装備の積み込み
完了、移動開始
本社から移動中の処理担当者に連絡が入る。当該物製造企業が製造する農薬製品はいずれもクロロピクリンを主成分とした物であることが確認された。
13:30...営業担当が現場到着
客先情報の確認、電源、水の借用、その他対応方法等の打ち合わせを行う。
13:50...処理担当者2名が現場到着
現場状況の確認、作業スペースの確保、資材の設置等を行う。現場付近には、クロロピクリン特有の臭気があり、漏洩物の色、目への刺激等からも同液がクロロピクリンであると想定しつつ作業準備を行う。エアラインマスクを装着して漏洩物に近寄り、同液に対し簡易テストを行う。
●漏洩液のpH試験紙テスト:中性
●同燃焼テスト:不燃、分解して酸性のガスを発生。
処理担当者がこれらの状況証拠を総合的に勘案して当該物がクロロピクリンであると推定したので、営業担当者は同推定を基にして客先へ回収及び処理法の提案を行った。
14:10...作業開始
●作業の安全対策のため、当該薬品缶を大型の受け皿容器内へ移動。
●薬品缶の蓋はネジ式の特殊蓋となっており、通常の工具では開封不可。漏出穴が小さく詰め替えが困難な為、缶上部に穴を開ける。内容物を密封する為、丈夫なポリ缶へ移し替える。空のペール缶は、ビニール袋に封入。
●漏洩した液溜まりをウエスで吸い取り、ポリ缶へ回収。
●漏洩箇所へ吸着剤を散布し、地面に良く馴染ませ、吸着剤とアスファルト上の土を丁寧に除去し、ビニール袋に封入。
●界面活性剤入りの水を含ませたウエスでアスファルトの上を丁寧にふき取り、ビニール袋へ封入。
16:00...作業終了
ポリ缶に回収した液、吸着剤及び土を安全に運搬し、処分する為の小分け容器に分割して封入。翌朝の引取りまで、客先の倉庫へ一時保管。
後日、当社工場へ搬入、焼却。
様々な緊急事態で、 迅速かつ適切な処理を行います。
ミヤマでは、化学物質を原因とした事故が発生した場合、現場の実態にあった化学物質の安全な取扱方法及び確実な回収方法に詳しいスタッフが現地に急行し、迅速かつ適切な処置を行なって被害を最小限に抑え、適正な運搬、処分方法の提案を行います。
今回の処理を担当した環境整備事業部処理担当者に訊きました。
―今回紹介した例の他に、どのような事例がありますか。
例えば、化学工場等の敷地内でタンクから重油、灯油、酸、アルカリなどが漏れ、回収のため出動要請をいただくケースがあります。事故現場での処置に必要な各種吸着剤、高圧洗浄機、発電機等の資材を持ち込んで作業にあたると共に、回収後の液の性状に合わせ、適切な能力を有するローリーや運搬用容器の手配も行います。
―化学工場では異常反応や火事による事故も多いようですね。
はい。過酸化水素水を含む廃液等と研磨金属粉(アルミ粉など)等が何らかの理由で混入してしまい、化学反応が始まってしまう、等のケースがあります。最寄りの営業所員が現場へ急行するか、あるいは現場との電話連絡等によって詳しい状況や、何が反応しているか等の聞き取り調査を行い、引き取りローリーの種類、受入工場の選定、対処方法の検討等を行います。また、化学的知識の豊富な担当者が現地に入り、現場ならではの情報収集から反応を早期に終了させる手だてを尽くすなどして、運搬中の事故防止も図っています。 また、工場火災の場合、消防が消火したものの、消火に大量の水を使用する為、工場内の化学物質を含んだ水が回収槽の容量を超えてあふれ出し、雨水用の側溝等をつたわって外部へ流出してしまう場合があります。こうした汚染拡散を防ぐ為、回収を行ったり側溝洗浄等の依頼をいただくケースがあります。
―最近は、寒冷地の一般家庭に設置された200L程度の灯油タンク(少量危険物保管タンク)から灯油が漏洩して問題になるニュース等も多く聞きますが。
こうした場合、通常は消防署や市の担当者等が通報を受け現場の処理を行いますが、最終的に回収した廃棄物の処理を要請いただくケースがあります。また、一般車両が事故を起こし、水田等に落ちた際にガソリンを漏洩してしまい、水田の汚染水及び汚染土の除去を行い、更なる汚染の拡大を防ぐことを委託されたケースもありました。
―7年前の阪神淡路沖大震災でも、当社ではプロジェクトを組んで処理に当たりましたね。
震災直後の混乱の中、内容不明の化学物質が漏洩する等の事故が多く発生しました。自治体から要請いただき、現地での処理と収集運搬、そして当社工場での適正処理にあたりました。
―地震といえば、東海地域を震源とする巨大地震が、いつ起きても不思議ではない状況のようですが、予想されているような巨大地震が発生した場合、家屋の倒壊や火災などの災害によって、様々な化学物質の漏洩事故が発生する可能性も高いと思いますが。
ええ、地震そのものを防ぐことは出来ませんが、事前に出来る対策もあります。今回冒頭でご紹介した事故は、使われないまま長期間保管されていたクロロピクリンの漏洩による事故でしたが、この例のように、長期間保管されている化学物質は様々な場所に案外多くあるものです。万一の災害や事故が発生する前に、適正な処理を行なうことで、化学物質漏洩事故のリスクを回避することは、災害によるリスクを低減する大きなポイントではないでしょうか。当社では、化学薬品や農薬、あるいは特殊な化学物質まで、様々な処理困難物を適正に処理する業務を行っています。もし、そうしたものを処分したいとお考えでしたら、ご連絡いただければと思います。中には、長年保管しているうちに、ラベルが剥がれて中に何が入っているのか判らない、という場合もありますが、当社ではこうした物についても経験豊富な分析担当者が責任を持って対応しますので、安心してお任せいただけます。
<ミヤマ・ホットラインシステム 24時間365日サービス>
日曜、祭日(その他休日)、及び夜間等、時間外の電話による受付を行い、より一層のサービス向上と緊急時における対応体制をシステム化。今回ご紹介した化学物質事故の他、様々なお客様のご要望にお応えしています。
受付電話番号:026-285-4166
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