第38話:森は不思議な想像力の舞台。
人は大海原の前に立つとき、自然の偉大なる力にひざまずき、
満天の夜空を見上げると、いかに自身がちっぽけな存在か、
あらためて思い知るという。
では森の小道を歩くとき、人は何を考え、想いを馳せるのでしょう。
哲学者カントに限らず、森の中に入ると、
不思議に誰もが哲学者になってしまうようだ。
森は古くから童謡や民話のほかに文学や詩、音楽の舞台になってきた。
グリムやアンデルセン童話、森のロビンフッド。
音楽では、ワーグナーのタンホイザー、ウェーバーの魔弾の射手、
メンデルスゾーンの真夏の世の夢も森が舞台。例をあげればきりがない。
音楽を聴くと心がなごむのは、その世界に森が登場し、
森に抱かれた気分になれるからだろうか。
森は偉大な力をもつ、不思議な想像力の舞台のようだ。