第34話:愛がなければ森は育たない。
十九世紀の半ば、熱心に森林教育を説いたのは、
ベルリン大学の教授などを歴任したF・パイルであった。
彼の森林教育は、ひとことで言えば、自然に親しめ、樹木と森林を愛せであった。
愛がなければどんな豊富な林業の知識も十分ではないと説いた。
その愛を具体的に表す行動として
自然の観察と研究、自然の中での労働、自然への奉仕を挙げている。
「樹木に問いかけなさい。
樹木は本が教えるよりもっと明確に教えてくれるであろう。
私は六〇年間森を歩き続けたが、学ぶことが尽きない」、
と彼は語っている。そして、こんな詩もつくっている。
“木々をわたる風の声の中で、私はひとり自然とともにある。
どんな争いもここには無く、深い平和があるだけだ”。
森を愛したパイルの尽きぬ思いが伝わってくるようだ。