2008.03.19
環境のための警鐘は、未来の世代のために。
NBS長野放送様では、平成4年より諏訪湖から地球全体の問題を考える「よみがえれ!諏訪湖」キャンペーンを10年以上継続されてこられました。このキャンペーンをきっかけにして、諏訪湖の浄化は進み、現在では「泳げる湖」にまで回復しました。この一連のキャンペーンを担当してこられた宮尾局長に環境への想いを伺いました。
諏訪湖は現在では「泳げる湖」にまで浄化が進んでいますが、平成2年当時は深刻な状況でした。当時地元で浄化活動に取り組まれる方々の「泳げる諏訪湖を取り戻そう」という活動に共鳴を感じて、湖浄化の先進地ドイツの専門家を招いて開催された「日独環境まちづくりセミナー」を取材し、平成2年8月に「よみがえれ諏訪湖〜西独の成功例に学ぶ」を放送したんです。
当時放送された番組は大きな反響を呼び、その後12年にわたって諏訪湖を題材にしたシリーズが制作されました。その中で、「よみがえれ諏訪湖3〜ドイツに学んで12年、あしたへ〜」は第43回科学技術映像祭文部科学大臣賞を受賞するなど、このシリーズは数々の賞を受賞しています。
地球環境への想いから始まった、 「よみがえれ!諏訪湖」キャンペーン。
キャンペーンがスタートした平成4年当時は、オゾンホールや酸性雨の影響で森が枯れるなど、少しずつ環境問題が認知され始めたころでした。そこでいろいろと調べていく中で、(このまま放っておくと、地球環境は私たちの孫の世代には大変なことになるのではないか)と思ったのが、このキャンペーンを始めるキッカケでした。また平成10年からは、「できることから始めよう」を合い言葉にした「青い地球 緑のNAGANO」キャンペーンもスタートしました。未来の子供たちに信州の美しい水と緑を引継いでいこう。そしてこの活動が地球環境への姿勢や考え方につながるひとつの架け橋になれば…と思ってやってきたのですが、少しでも皆さんの環境に対する想いのお手伝いができたとすれば嬉しいですね。
メディアの環境キャンペーンの先駆けともいえる長野放送様のキャンペーンは、今でも耳に残る「できることから始めよう」というキャッチコピーと共に、私たち視聴者の環境意識を大きく高めてくださいました。
「化学兵器は敵と味方を区別しない」 何世代にも及ぶ環境影響。
昨年、岡谷市出身の報道カメラマンで、ベトナム戦争の枯れ葉剤被害を追い続けている中村梧郎さんを取材した番組を制作して、放送しました。中村さんは30年にわたって枯れ葉剤被害を取材されています。枯れ葉剤は、ベトナムの環境を破壊し、今もなお世代を超えて被害を与えています。化学兵器は敵と味方を区別しません。ベトナム戦争に従軍した米韓の兵士が、枯れ葉剤の影響と見られる病気を発症している例もたくさんあります。ベトナムは、もしかしたら地球全体の縮図なのかもしれません。環境問題も、この地球上に生きる全ての者の問題です。今の私たちの生活で傷ついてしまった環境が、孫の世代に影響を及ぼしてしまう。環境問題の本質はここにあるといえるのではないでしょうか。未来の子供たちのために、これからも「できること」を考えていきたいと思っています。
「枯れ葉剤被害は終わらない 〜報道写真家 中村梧郎の30年〜」で、2007年の日本民間放送連盟賞テレビ報道番組優秀賞を受賞された宮尾局長。私たちの心に響く番組は、ジャーナリストとして本質を見極める鋭い目線と、人の心を慮れる優しさが根底にあるからこそ作れるのでしょう。環境への想いを話してくださる優しい瞳が、印象に残る取材でした。
■プロフィール/宮尾哲雄(宮尾哲雄) 1972年長野放送入社。業務部を経て報道部に配属。記者、デスクとしてニュース番組の制作を担当するかたわらドキュメンタリー番組を多数制作。日本民間放送連盟賞優秀賞、ギャラクシー選奨等受賞。2006年制作の「吾に短歌(うた)ありき〜ある死刑囚と窪田空穂〜」は日本民間放送連盟賞教養番組優秀賞、第15回FNSドキュメンタリー大賞 大賞を受賞。主に環境問題をテーマに「NBS月曜スペシャル」等、多くの番組を制作。
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