2007.08.01
虫のかくれんぼ、がライフワーク。ネイチャーフォトグラファー 海野和男氏
北に浅間山、南に八ヶ岳、そして西に遥か北アルプスを望むロケーションの、長野県小諸市の南に位置する小高い山の上の緑豊かな別荘地に、昆虫写真を中心とした著書をはじめ、ホームページ「小諸日記」やテレビなどでもご活躍の海野和男先生のアトリエがあります。私たちが普段気のつかない、虫たちの知られざる世界についてうかがいました。
虫のかくれんぼ、いわゆる擬態は、私の学生時代からのテーマなんです。昆虫は生態系の中では下部に位置していますから、鳥などの動物のエサとなる宿命があります。それならば鳥に見つかりにくい体になれば良い。すると鳥もそれを見破るために目が良くなる、すると昆虫ももっと見つかりにくくなろうとしてより凝った擬態を施すようになる。見つかりにくければ生きながらえる可能性も高くなるわけ。ですからいかに周囲の環境にとけ込むか。ある種類の蛾は、まるで枯れ葉が丸くなったような模様を3Dで自分の羽に描いているんです。
また周囲に同化するだけではなくて、ある種類の蛾は、脅かすと羽を開くのですが、模様が目玉のように見えるんですね。鳥は大きな目が嫌いですから、効果があるのでしょう。鳥よけの目玉風船というのがありますが、じつはあれは私の友達が作ったんですが、この蛾の擬態からヒントを得て考えついたんですよ。虫のかくれんぼ、いわゆる擬態は、私の学生時代からのテーマなんです。昆虫は生態系の中では下部に位置していますから、鳥などの動物のエサとなる宿命があります。それならば鳥に見つかりにくい体になれば良い。すると鳥もそれを見破るために目が良くなる、すると昆虫ももっと見つかりにくくなろうとしてより凝った擬態を施すようになる。見つかりにくければ生きながらえる可能性も高くなるわけ。ですからいかに周囲の環境にとけ込むか。ある種類の蛾は、まるで枯れ葉が丸くなったような模様を3Dで自分の羽に描いているんです。また周囲に同化するだけではなくて、ある種類の蛾は、脅かすと羽を開くのですが、模様が目玉のように見えるんですね。鳥は大きな目が嫌いですから、効果があるのでしょう。鳥よけの目玉風船というのがありますが、じつはあれは私の友達が作ったんですが、この蛾の擬態からヒントを得て考えついたんですよ。
子供たちに虫の不思議を伝えたい。
先日佐久で子供たちに昆虫教室をやりました。今の子供たちには圧倒的にカブトムシやクワガタムシが人気ですが、擬態を見せてあげるとすごく興味を示してくれるんですね。子供向けに昆虫の擬態の本も出していますが、そこから昆虫の世界に興味を持ってくれる入り口になってくれればいいな、と思っています。子供たちに虫の不思議を伝えたい。先日佐久で子供たちに昆虫教室をやりました。今の子供たちには圧倒的にカブトムシやクワガタムシが人気ですが、擬態を見せてあげるとすごく興味を示してくれるんですね。子供向けに昆虫の擬態の本も出していますが、そこから昆虫の世界に興味を持ってくれる入り口になってくれればいいな、と思っています。
蝶はもっとキレイになりたい。
蝶は目で仲間を捜したり花を見つけたりするんです。色や形がコミュニケーションの手段になっているんですね。また目がいいからマネをするのもうまい。蝶は自分は毒を持っていなくても毒を持った蝶に似せた模様になるんです。たとえば黄色やオレンジ、黒などいわゆる警戒色を身につけることによって、鳥に補食される可能性を減らしている訳です。蝶は人間と同じで、もっとキレイになりたいんですよ。人間が着飾るのと同じで。でも、キレイになりすぎると鳥に補食される可能性も高くなる。蝶はそのせめぎ合いの中で自分の体に模様をつけているんです。
あと、蝶にも流行がある。小さな島に生息している蝶は、似てくるんですよ、たとえば黒っぽかったり、羽の先がとがっていたりと。そんなところも観察していて本当に面白いですよ。
昆虫は、省エネ生活の天才。
昆虫は小さくなることで成功した生き物です。そして非常に省エネルギーなんですね。たとえばミツバチは3kmくらい先まで飛んでいって蜜を集めてきますよね。これは人間のスケールで見ていると気がつかないんですが、ミツバチは自分の体の何倍の距離を移動しているのか、という相対的なスケールで見てみると、 250kmくらい移動していることになるんですよ。ここ(小諸市)から名古屋くらいの距離ですね。それなのに蜜を巣まで持って帰ってくる。使うエネルギーよりも持って帰ってくるエネルギーの方が大きい。これはすごいことですよ。蟻もそうですね、自分の体の何倍の距離を歩くのか、と考えたらものすごく足が速いし長距離を歩いているんですね。私たちは限りある資源を使って生活しています。効率よくエネルギーを使う上で、昆虫たちの生き方から学べることはたくさんあるような気がします。
トンボと蝶は、環境のバロメータ。
私は学生時代からずっと蝶を撮影してきたのですが、あるときからトンボにも興味を持つようになったんです。蝶がいる環境とトンボのいる環境は全然違う。蝶にとって大切なのは、幼虫のエサとなる植物が繁殖している環境です。トンボは小さな沢から谷川、ある程度大きな川まで水があることが条件。ですから大きなスケールで環境を図るときはトンボが、小さなスケールの場合には蝶が指針になると思います。蝶とトンボが住める環境かどうかが、水と緑の環境のバロメータになるんだと思っています。
アトリエのベランダは、ミミズクのレストラン。
アトリエの庭には、先生手作りの昆虫のエサ台が置か れています。エサも先生が作られた、砂糖や黒蜜をまぜた焼酎にバナナをつけ込んだもので、カブトムシや クワガタムシがエサを食べに集まってきます。ある日、ベランダにミミズクがちょこんととまっていてね。ミミズクはカブトムシやクワガタムシが大好物ですか ら、私の庭はおいしいごちそうがあるレストランみたいなものでしょうね。ミミズクとかフクロウとかは結構グルメで、頭の部分は固くておいしくないのか食べ ないんですよ。朝、庭を歩くとミミズクの食べ残しが残ってることもありますよ。
海野和男先生 プロフィール 1947年、東京生まれ。東京農工大学卒業。昆虫を中心とする自然写真家。 写真集「昆虫の擬態」で1994年日本写真協会年度賞受賞。 NHK教育「ようこそ先輩」、TBS「どうぶつ奇想天外」などテレビにも出演。 長野放送制作の「知られざる虫たちと海野和男の映像世界」は2006年科学技術映像祭で文部科学大臣賞を受賞。 日本自然科学写真協会副会長、日本アンリ・ファーブル会理事。 ホームページhttp://eco.goo.ne.jp/nature/unno/
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