2004.12.01
「ミヤマ環境フォーラム 地球への旅 第2話/宇宙(そら)」 10月2日、弊社創立30周年記念事業として開催。佐治晴夫先生に人と環境の関わりについて講演いただきました。
10月2日、弊社創立30周年記念事業として開催した、環境フォーラム 地球への旅シリーズ第二話/宇宙(そら)。 メインパーソナリティーは当誌でもご紹介した、佐治晴夫先生。先生自らがピアノ演奏する、バッハのプレリュードで幕を開けた今回の地球への旅。音という振動が意味する数学は、E.T.(地球外生命)との交信方法でもあるという。不思議な音と珍しい宇宙の映像を交えて、宇宙からの視点で、人と環境の関わりについて講演いただきました。
一匹のえびの中に全ての世界が投影されている。
「先ほどの昼食で、えびの天ぷらをいただきました。例えば、えびを養殖するために熱帯雨林を切り開き、養殖池をつくったかもしれませんね。日本人は世界で一番えびを消費する民族です。私達が豊かな暮らしをするために、えび一匹を食べるために何本の熱帯雨林が伐採されたのか、と考えるわけです。」 科学者は一匹のえびの中に宇宙を見るのだそうです。また、モノやコトのできかたのプロセスを理解するのも科学者だと言います。 「137億年前、宇宙が生まれました。光が生まれ人間になる過程には、無駄なものは一つもないのです。」 私達の体には約60兆個もの細胞がありますが、そのたった一つたりとも無駄な細胞ではなく、それぞれに役割があるということを気付かされました。 「私達は酸素を吸って炭酸ガスをはく。肺で行われる呼吸ですね。木は私たちのはきだした炭酸ガスを再び酸素に換えてくれる、見方を変えると体の外の肺と言えるのではないでしょうか。私達は体の中と外、両方に肺を持っていることになります。なぜ木を傷つけてはいけないか?という問いに、自分の体の一部を傷つけているのと同じだからという答えもあると思います。」 「今「あなた」が存在するためには、当然ご両親がいらっしゃる。そのまたご両親がいらっしゃって、例えばここ長野の善光寺が建立された1300年ちょっと前に遡ったとしても120億人という人間の存在が必要となるのです。そのうちのたった一人の人間が欠けても、「あなた」は存在しなかったのです。その意味では「私とあなた」から「あなたと私」という向き合い方、価値観に変えることで相手を認め、関わりあうことで世の中の見え方が変るでしょう?つまり、すべてのものは関わり合い、つながっているという視点なのです。」 なぜ?に答える理由を、すべてのものが関わりあい、つながっているという視点から考えると見えてきますね。
音と映像で綴る地球への旅。
みなさんは宇宙の音を聞いたことがありますか? お話の合間に、鳥のさえずりとも、蛙の鳴き声とも聞こえる不思議な「太陽から吹く風の音」を聞かせてもらいました。ある定義をすることで、実は今もその風は私達の頬に当たっていると言えるのだそうです。光がしずくのようになり、物質の元が雲のようになり、星になる。星はたくさんの元素をつくり輝きます。そして輝く力を失った星が自身を支える力を失って縮もうとする時の音、「星の臨終の音」などを交えて宇宙の不思議を体感させてもらいました。 また、ジョディー・フォスター主演のSF映画、「コンタクト」。佐治先生は、原作者カール・セーガンにE.T.との交信方法に音を使うことを提案。制作の裏側に迫る、貴重な映像もここで公開されました。
「世の中は全く正反対のものとペアでできています。宇宙には全く同数のプラスの電子とマイナスの電子が存在します。両方あわせればゼロになります。しかしそのどちらかがたった一つでも多かったら、100分の1秒ほどの一瞬で宇宙は壊れてしまうでしょう。宇宙に存在する全てのものは対になっています。無があるから有があることがわかる。生きるということで、死ぬということがわかる。科学は目に見えないものを見えるようにし、聞こえないものを聞こえるようにしました。しかし見えるものには限界があります。悲しみは目に見えないでしょう?相手がどれだけ悲しんでいるか、見えませんね。それを知るために私達は想像し、感じ取らなくてはならないのです。」 「みえないものでもあるんだよ」そのような世界観を表現した金子みすゞの詩をチェロとピアノの演奏にのせて朗読。フォーラムの締めくくりとなりました。 宇宙からの広い視野で環境を捉えた時、「科学は見えないものを見えるようにし、聞こえないものを聞こえるようにする」という恩恵だけでなく、科学だけではみえてこないものを感じ取る感性を併せ持つことの大切さを教えてくれる講演となりました。
お客様の感想
長野清泉女学院高等学校/岡村照江先生
-今回のフォーラム、いかがでしたか?
すごく良かった!物理や科学って、とりわけ敬遠されがちな分野ですが、それを感じさせない、たいへんわかり易いお話でした。この分野についてより一層興味を持った人が多かったのではないでしょうか。
-化学と物理の先生でいらっしゃるという事ですが、教育者の視点からどんなことを感じられましたか?
「人の痛みや悲しみは見えないけれど、存在します。それを知るために想像し、感じなくてはならないのです。」というお話がありましたよね。もう少し私達は敏感にならなきゃいけないと思いました。今の人間は自然を観察する力に欠けているような気がします。小さな川でも「川に入ってはいけない」という看板があったりするでしょう?子供が自然と触れ合う機会を大人が潰している事が多いのではないでしょうか。
-佐治先生のお話でも随所で触れられていた「環境」。岡村先生は、「環境」についてどうお考えになりましたか?
自然現象としての地球の変化と、人間が原因の変化を見極める必要があると思います。人間が創ったものは自然に還らないものが多いでしょう?今まで自然の中にできていた循環を見つけ、再びそれに乗せるべきではないでしょうか。地球の持つ分解能力をしっかり捉えて、最後まで責任をもつ必要があるのではないかと、佐治先生のお話を聞いて再認識しました。また、このような機会があったら是非参加させてくださいね。
現代美術画家/丸田恭子さん
もともと自然や生態系の循環、宇宙、そういったものに興味があったので、とても興味深いフォーラムでした。まず、理論物理学者の先生の講演が、ピアノの演奏から始まったことに驚き、なんてユニークなフォーラムなんだろうと感じました。この時すでに、科学と芸術が関わり合っているということをすごくよく分かってらっしゃる方なのだと思いました。
-すべてのモノゴトは関わりあっているという視点。丸田さんの作品にもあてはまるのではないでしょうか?
ええ、科学と芸術は共通点が多くリンクしていると思います。対になって存在するというお話、わたしは「陰と陽」という表現ですが作品にも同様に表れていると思います。それから佐治先生が朗読された金子みすゞの詩にあるように、目に見えないものがあると思っています。むしろ99%は見えないものではないでしょうか。しかし、根底では全てつながっていると思うのです。
-佐治先生が、丸田さんの作品に出会ったら、そこにどんな宇宙を見ることでしょう。
楽しみですね、どんな感想を持っていただけるのでしょうか。
お二人以外にもたいへん多くのお客様からご意見、ご感想をお寄せいただくことができました今回のフォーラム。みなさま、ほんとうにありがとうございました。波、宇宙(そら)、に続き第三話地球への旅はどんな旅になるのでしょう。皆様から頂戴したご感想やご意見を踏まえ、次なる旅をコーディネートして参ります。どうぞご期待ください。
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