2004.05.01
宇宙の年齢は137億年(±1億年)...。 2004年2月28日、宮城大学で行なわれた、佐治晴夫先生の最終講義の模様を紹介。
佐治晴夫先生をご存知ですか? "ゆらぎ"の数学的理論を「ゆらぎ扇風機」などの家電製品に応用され、また、宇宙物理学の分野における活動でも大変著名な佐治晴夫先生。天文台で真昼の星を見たり、パイプオルガンの演奏で始まるユニークな宇宙論講義は学内外からの聴講者でいつもいっぱいです。今回は、2004年2月28日、宮城大学で行なわれました、最終講義の模様を紹介しましょう。人と宇宙の関わり
中国の古い文献によると宇宙という漢字の、「宇」は四方上下、つまり"空間"を表し、「宙」は往古来今、"時間"を表します。宇宙とは空間と時間を同時に表現する言葉なのです。自分自身が空間を占有し、私たちが生きる時間は物事に関係なく動いているのです。ですから宇宙の研究は、人間としてどのように生きていくか、人生そのものの研究と言えます。 自分自身がいる事実を、「奇蹟が、奇蹟を生んだ結果」と思っているかもしれませんが、それは誤解です。まわりとの相互作用で、生きられないものは抹殺されて、あなたがいます。そしてこれは、数学的に解析できる、偶然ではない必然なのです。今、私たちがこうして生きていることは宇宙のシナリオに組み込まれているのです。宇宙のはじまりとゆらぎ
昨年NASA(アメリカ航空宇宙局)で、「宇宙は今から137億年(±1億年)前に生まれた」という事実が確定しました。これは、銀河からの風のゆらぎ、太陽系・外惑星探査機ボイジャーからのデータ、宇宙からの電波など様々なデータを総合してこぎつけた結論です。そしてこの解明に、NASA客員研究官の私も関わりました。 さて、宇宙はどこで始まったのでしょうか?ハッブルによる銀河の後退運動(ハッブルの法則)の発見等により、宇宙は膨張しているという膨張宇宙論が提唱されています。宇宙が始まった時と同じ電波はここにもあり、宇宙には膨張の中心もなく、一様に広がっています。言い換えれば宇宙は、あなたがいる場所から始まったと言えるのです。あなたは宇宙の中心にいるのです。 宇宙の始まりは、認識できない、平べったいもの、一様なものから生まれました。しかし宇宙には一様ではない、微妙な変化が存在します。例えば、窓ガラス。完全に厚みが同じガラスだったら、あるかないかわかりません。しかし、厚さが微妙に違う部分があるから、ガラスがあると気付きますね。私達の脳は、一様なものは認識できず、変化のあるものを認知する仕組みになっています。この変化(ガラスの厚みの違い)がまさに"ゆらぎ"です。この考えを取り込むことで、宇宙の始まりがはっきり見えてきたのです。E.T.(地球外生命)は存在するか?
さて地球外に生命体はいるのでしょうか?火星にはかつて水がありました。オリオン座からは、たんぱく質の主要構成成分であるアミノ酸から出る電波が届いています。宇宙には、生命体がいない!とは誰も言えないのです。 自分たちが何者であるかを知るために、私達は地球の外を見なくてはいけません。外を知ることで、私達の位置付けがハッキリするからです。宇宙を研究すること、E.T.(地球外生命)を探すということは、地球や人間について考えることに他ならないのです。 以上、佐治先生の最終講義のほんの一部をご紹介させていただきました。 本年10月2日(土)開催予定のミヤマ環境フォーラム第2回"地球への旅"では、佐治先生によります講演を予定しています。深宇宙探査機ボイジャーにバッハの「プレリュード」搭載を提唱されたことでも有名な佐治先生。"地球への旅"ではその理由もお聞きできるかもしれませんね。どうぞご期待ください。■プロフィール/佐治晴夫(さじはるお)先生
1935年、東京生まれ。 理学博士、鈴鹿国際大学短期大学部学長。 立教大学、東京大学で基礎数学、理論物理学を学んだ後、東京大学物性研究所、松下技研佐治研究室室長、NASA客員研究官等を経て現職。 (財)日本宇宙少年団理事、(財)日本理科学検定協会会長。 量子論的無のゆらぎからの宇宙創生の理論のほか、NASAを中心としたE.T.(地球外生命)の探査にもかかわっている。 現在のVHS時代の先駆けとなった「3倍速VTRヘッド」や「1/fゆらぎ扇風機」の開発などの業績でも知られる。また、科学と芸術との学際的新分野「数理芸術学」を提唱して、理系・文系の枠を越えた全人教育としてのLiberal Arts教育に力を注いでいる。 「二十世紀の忘れ物」・「宇宙の不思議」・「宇宙の風に聴く-君たちは星のかけらだよ」・「宇宙はすべてを教えてくれる」・「金子みすゞを旅する」・「星へのプレリュード」など著書多数。※掲載内容は発行時点のものです。最新情報についてはお問い合わせください。