1999.02.01
告発の時代から、アクションの時代へ。 環境ジャーナリストに訊く
環境新聞社小峰編集長様 環境問題をリードするメディアのひとつ、環境新聞社の取締役編集局長に、環境ジャーナリストの目から見た環境問題についてお訊きしてみました。
環境をプラスに捉えた企業が生き残っていく。
-企業を取り巻く環境問題の最近の傾向と今後についてお話しいただけますでしょうか?
いきなり、難しい質問ですね(笑)まず、これからは環境を考えない企業は生き残れないだろう、ということです。ただし、単に環境だけ考えていても、これもまた生き残れない。どうバランスをとって考え対応していくか、ということです。 ただし、環境をマイナスの面で捉えていくとやはりこれは難しい。プラスの面で捉えている企業が生き残っていくのではないでしょうか。では環境をどんな風にしてプラスの方向で捉えていくか、というと、たとえばモノづくりの中で、環境というものを本業の中にどのように取り込んでいくか、ということなのです。こうした考え方をきちんと持っている企業が、これから頭角を現わしていくのではないでしょうか。環境というものをモノづくりの品質管理の中心に据える等、そこまで取り込んでものを考えていくことが求められていくのではないでしょうか。
規制強化の方向だけを見ていると、全体を捉えられない。
-今後、法的規制の強化が進むと思いますが、どのようなことが予想されるのでしょうか?
今後こうした規制が緩くなることはない、ということです。国際的な動きをみていると、非常に厳しくなっているからです。環境そのものを業務とする企業だけでなく、一般企業でも同じです。法律、商取引、品質管理等の面でのチェックが今後様々な形で厳しくなり、それが現在の環境規制とリンクしていくことになるのです。ですから、環境基準をクリアしていくというような規制強化の方向だけを見ていると、全体を捉えられないのです。日本の社会全体が今度どんな方向へ進んでいくのかを見据えて環境規制に対応していかなければならないのではないでしょうか。 私は、環境・資源・エネルギーの三つに対して今後どのような施策が出てくるのかに注目しています。部分的に規制が強化される場合もあるかも知れませんが、むしろ大きな流れの中でどのようにこうした問題をクリアしていくか、が求められると思います。
ISOの問題は実は貿易問題。
-今後、環境ISOはどんなポジションに位置づけられるのでしょうか?
環境ISOそのものは、経営のツールであり、目標を達成するためのツールなのであって、決して規制ではありません。ISOは環境基準ではなく、自らに課した目標なのだ、ということです。今後は、企業のトータルな戦略として、作業環境、LCA、環境戦略といった部分で、ISOの重要性はますます増していくと思われます。また、一部の金融機関では、企業姿勢として、ISOというスタンダードな手法を導入し、自身の不透明な部分をクリアにしていこう、などという動きもあるわけです。まさにグローバルな意味での環境への対応といえると思いますが、今後はこうしたことが当たり前の時代になっていくのかも知れません。 もう一つ重要な問題は、ISOの問題が実は貿易問題とリンクしている、ということです。環境と貿易の関係は、今後大きな問題になってくると思いますが、これは企業の環境戦略等を含めて、ますます重要になって来ると思います。
-産業廃棄物処理業の現状とその問題点についてはどのようにお考えですか?
まず必要なのが、産業廃棄物処理業界の再編ではないでしょうか。たとえば、一部の悪質な産業廃棄物業者の不法投棄による住民とのトラブルがあちこちで起きていますが、このような問題を見ていると、これからのキーワードは、信頼に応えられるような企業にどう育っていくか、だと思います。消費者の信頼を勝ち得られる産業廃棄物処理業者になることです。ではどうするか。そのためには技術力をつけていかなくてはならないでしょうし、一方では情報公開も行っていく必要があるでしょう。
環境問題は「日本再生の切り札」。キーワードは「信頼」。
-ズバリ、環境問題の切り札は何だとお考えですか?
環境問題はそれだけでは解決出来ない課題を抱えています。エネルギー、ライフライン、交通、情報等々、他の分野が抱えている問題をどれだけ取り込んで行けるのか、が重要です。ですから、「環境問題の切り札」というよりは「日本再生の切り札」という発想で考えていった方が良いのではないでしょうか。 そうした視点で見ると「技術と文化」というものがとても大切だと思うのです。文化の根底には技術があります。そして、技術というものは、地域の生活に深く根ざしているのです。あらゆる技術が環境問題を解決出来得るものになっていくことが切り札です。 そのためには、グローバルな発想でものを見ていくことが一番大切です。環境問題をひとつのレンズとして世の中を見渡してみる。環境を、それ自体を目標とする環境至上主義で捉えるのではなく、社会を見るための道具として捉えることが必要なのではないでしょうか。こうした環境の視点に、さらにもうひとつの視点を加えると、より複眼的にものを見ることが出来るわけです。たとえば、資源と環境、という風に。そうしたものの見方が一番大切だと思います。
-今、環境のために企業がなすべきこと、個人がなすべきことは何でしょうか?
そうですね・・・「悩むこと」でしょうか。そして問題を正確に見つめることです。見つめることの中にしか解決法はあり得ないのですから。そうした努力をすることが大切だと思います。 環境を多角的にみることでマクロに捉えていく。そこで大切なのはプラス思考に基づいたアクション…。常に環境問題をリードするジャーナリストとしての視線を強く感じたインタビューでした。ありがとうございました。
※掲載内容は発行時点のものです。最新情報についてはお問い合わせください。