1999.02.01
逆工学 信州大学大学院の授業「表面修飾科学」で特別講演
信州大学工学部環境機能工学科の武井たつ子教授から依頼され、同学部でミヤマ環境装置事業部・山岸富作さんが左記の題で特別講演を行いました。
豊かさと便利さを与えてくれる生産工学とその逆工学との関係
どの産業でも製品を製造すると廃棄物がでます。工学というのは、いわゆる生産のためのものととらえられがちです。生産する際に発生する廃棄物のことを考えるのが逆工学です。持続可能な社会の構築には、循環型社会のシステムが必要といわれています。廃棄物をバランス良くリサイクルしていかないと生産は成り立たなくなります。今回は産業廃棄物処理業者の立場から、循環型社会構築のための逆工学を実現するための
1. 「廃棄物とは何か」
2. 「環境調和型技術」
についてお話ししようと思います。
地球規模での最大の廃棄物は二酸化炭素
日本の法律では廃棄物を「不要のものであって固形状または液状のもの」と定義し、それを一般廃棄物、産業廃棄物、放射性廃棄物にわけています。私個人としては廃棄物は以下の4つに分けたほうが良いと思います。
1. 一般廃棄物
2. 産業廃棄物
3. 放射性廃棄物
4. 気体性廃棄物
「気体性廃棄物」は私が作った言葉ですが、私はこれに含まれる炭酸ガスが最大の廃棄物だと思っています。
化学の目で見る廃棄物
日本は海外から原料鉱石、石油、食料などいろいろなものを約8億トン輸入しています。そして日本の産業廃棄物は約4億トン。輸入しているものの約半分は廃棄物となる計算です。廃棄物はすべて元素から構成されています。人間は元素を作り出すことができません。地球上の元素量は不変です。
人間に便利さと豊かさを与えてくれる反応だけを利用して不要物を安易に廃棄することはこの先長続きしないでしょう。廃棄物を化学の目で見るとゴミとは言いがたい大事な資源なのです。
廃棄は生産と同時に始まる
表はプリント基板ができるまでの工学と逆工学の関係です。
私達は使用した後の製品を廃棄するときだけ廃棄物が発生すると思いがちですが、実際には生産を始めた瞬間に廃棄は始まっています。この廃棄されるもののほとんどは再利用が可能です。生産の段階から逆工学を適用していけば、日本の産業廃棄物は激減します。逆工学を適用することは資源の無駄使いをなくすことであり、循環型社会を実現することです。
循環型社会を実現するためには
持続可能な社会の構築のためには、産業の生産工程で排出される廃棄物から家庭ゴミにいたるまで、可能な限り回収・再利用しなくてはなりません。私達の生活レベルを江戸時代並みにすればかなり快適な環境になると思います。しかしそれは不可能です。やはり逆工学の推進が必要です。工学を勉強されている皆さんに、ぜひ逆工学を勉強していただきたいと思います。期待しております。
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